NFTゲームを障害者雇用の業務に
株式会社One Leaf Clover(以下、OLC)は7日、シンガポールを拠点とするDigital Entertainment Asset Pte. Ltd.(以下、DEA)が提供するNFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)『Lucky Farmer(ラッキーファーマー)』を障害者雇用における業務の一部として採用したことを発表した。
DEAが提供するゲームプラットフォーム「PlayMining(プレイマイニング)」で遊べる『Lucky Farmer(ラッキーファーマー)』は、農園とコインプッシャー、ビンゴをテーマにしたシンプルな操作性のNFTゲーム。画面をタップして落としたメダルによってスロットを回すことで作物の収穫やペットの育成などができる。また、ゲーム内アイテムの肥料で農場NFTを肥沃にするとディープコイン(DEP)が報酬として得られる。
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PlayMiningでは、同社が発行する暗号資産(仮想通貨)ディープコイン(DEP)が流通しており、ゲームをプレイすることでDEPが報酬として付与され、日本円に換金することで収益が得られる。
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OLCは、エンタメやITなど様々な分野のクリエイターの転職支援を手掛ける株式会社クリーク・アンド・リバー(以下、C&R社)の障害者雇用特例子会社。同社はクリーク・アンド・リバーのグループ内における障がい者雇用促進を目的として2022年4月に設立された。
障害者の安定就労を目指す
OLCの障害者雇用では、スマートフォンで1時間『Lucky Farmer』を遊ぶことが業務の1つとされる。同タイトルをプレイすることで獲得したDEPは、OLCが仮想通貨取引所で日本円に交換し、とりまとめて給与の一部として従業員に支払われる。
従業員はそのほかの9時~16時の就労時間内で、自らの志向やペースに合わせてWebチェック、清掃、水耕栽培作業などグループ企業の事業に関わる業務を組み合わせて代行する形で取り組むことになる。
業務のうちNFTゲームのプレイが占める割合は多くないが、それをきっかけに従業員がモチベーションを維持しつつ安定的かつ継続的な就労につなげ、各々の目指すキャリアの実現を目指す狙いがあるという。
また、今回のOLCによる新たな障害者雇用の枠組み構築の背景には、障害者雇用促進法に基づいて設定される障害者雇用の法定雇用率が令和5年度より2.3%から2.7%に引き上げられたことが挙げられる。同社は以下のように述べた。
障がいを持つ方が毎日決まった時間に出社や在宅で仕事を継続することは、健常者が想像している以上に難しいこともある一方で、障がいを持つ方ほど自分のスキルと経験値を上げながら、社会や会社に貢献したいという強い想いを持っている場合が多いです。
今回のブロックチェーンゲームを取り入れる安定就労継続モデルは、毎日決まった時間に決まった業務を行い、報酬を得る習慣を身に着けることで、社会参画と努力が報酬に結び付く感覚や、仲間にゲーム方法を教えることでのスキルアップ、他の業務へのモチベーションの向上につながるOLC独自の取り組みです。
さらにOLCでは、本モデルを他社や他施設にも拡大し、社会全体での障がい者雇用の促進にも貢献してまいります。
今回の取り組みに先立ち、C&Rは2021年4月と2022年9月にそれぞれDEAへの出資を発表していた。
また、発表ではNFTゲーム開発やNFTアート領域などで協業する方針も明かされた。実際、これまでにC&R所属のVRアーティストせきぐちあいみ氏による「NFTアートライブペインティングイベント」の開催や漫画『ブラックジャックによろしく』『カイジ』のNFT販売、NFTゲーム『HERO SPIRAL』の共同開発を実施している。
障害者支援領域のNFTゲーム活用
障害者支援領域におけるNFTゲームの活用には、先行事例がある。
仮想通貨メディアを運営する株式会社CoinPostとWEB特化型の就労継続支援B型事業所を運営するWellsTech株式会社は2022年7月、株式会社WAVE3を共同設立した。
福祉就労に新しい選択肢を提供することを目指すWAVE3では、WellsTechが運営する就労継続支援B事業所「GIF-TECH’s」にて前述のPlayMining上のNFTゲーム『JobTribes』を、事業所の利用者の支援のために導入。
WAVE3は、NFTゲームで獲得した報酬を「GIF-TECH’s」に業務委託報酬として日本円で支払い、「GIF-TECH’s」よりゲームをプレイした障害者の方へ経費を差し引いた額を工賃として還元している。
DEA社様運営 @PlayMining_JP ゲーム「jobtribes」を活用した障害者就労支援を行い、利用者様にJPY工賃を初めてお渡しできました。
"ゲームで稼ぐ"を福祉施設でも実現できた歴史的な瞬間。
福祉の世界をWeb3、ブロックチェーンのチカラで変化させられている手応えを感じる、大きな大きな1歩でした。 pic.twitter.com/fnemcMPEGr
— KONDO|Web3と福祉を繋ぐ人【Crypto Welfare】 (@kondo_wellstech) September 29, 2022
ついに2店舗目の内装工事が着工しました!!!
Web3/Webワーク特化型の就労継続支援B型も、ようやく2店舗目..
現物店舗系の事業はすんごいパワー要るけど、魔界にいる身としては手触り感があってとても好きな仕事です。
インターネットの力で、障害福祉の"今まで"を変える!!!!!!! pic.twitter.com/e0E1AZuftS
— KONDO|Web3と福祉を繋ぐ人【Crypto Welfare】 (@kondo_wellstech) June 2, 2023
障害の程度が重い利用者が多く通う就労継続支援B型事業所では、単価の安い単純作業への偏りや工賃月額の安さ(全国平均約15000円以下/月)といった問題がしばしば取り沙汰されるが、GIF-TECH’sでは全国の工賃月額を上回る額を還元しているという。
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参考:公式発表
参考:厚生労働省資料
参考:株式会社WAVE3