web3ホワイトペーパーを公開

自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームは6日、「web3ホワイトペーパー ~誰もがデジタル資産を利活用する時代へ~」を公開した。

公開されたホワイトペーパーの内容は、以下の3つに大別される。投資家から切望される仮想通貨の税制改正をはじめ、NFT、メタバースに関する提言も見られた。

  1. 事業遂行上のボトルネックとなっており直ちに解決に向けて取り組む論点
  2. web3エコシステムが発展し広く普及することを見据えて今から議論を開始・深化すべき論点
  3. NFTホワイトペーパー提言の進捗モニタリング

上記3に記載のある「NFTホワイトペーパー」は、2022年にweb3PTが公開したweb3に関する初めての政策提言。NFT(非代替性トークン)ビジネスを国内で推進するべく6つのテーマに沿って24の論点について提言が記されていた。

日本のWeb3.0業界の現状に警鐘

ホワイトペーパーの導入部分では、かつて世界の暗号資産(仮想通貨)業界を牽引していた日本が、事業環境が諸外国に劣後するようになったと指摘し、人材の国外流出が増加しつつある現状に警鐘を鳴らしている。

一方で、昨年からのマクロ経済の悪化やFTX破綻に代表される悪材料の噴出により仮想通貨の冬と呼ばれるほど市場環境が悪化するなか、世界的にみても非常に厳しいと指摘される日本の仮想通貨をめぐる規制が評価されつつあることを念頭に、「web3の真価を問い直し、新たな革新の芽を育む好機」と表現した。

また、これまで業界を牽引してきた「アーリー・アダプター」だけでなく、今後は誰もが当たり前にウォレットやデジタル資産を保有する「マス・アダプション(大衆受容)」を目指すべきと提言する。

関連記事:「日本が世界の先頭に立つチャンス」自民党の平将明Web3PT座長、Web3活用の地方創生を政府に要請

web3の推進に向けてただちに対処すべき論点

1のただちに対処すべき論点には以下のテーマが挙げられている。

  • 国際的なルール策定
  • 税制改正
  • 監査機会の確保
  • DAO
  • 各種トークン審査・発行・流通
  • 消費者保護
  • 金融機関のweb3参入
  • NFTビジネス
  • 投資ビークル・スキームの多様化

税制改正のテーマにおいては、仮想通貨取引(デリバティブ取引含め)による損益を申告分離課税の対象とすること、損失が出た場合に翌年以降3年間所得金額からの繰越控除を認めることを検討すべきと提言。

そのほか、のトークンの期末時価評価課税から短期売買目的でないものを除外して取得原価で評価すること、仮想通貨同士の交換による損益については課税対象から除外することなどが盛り込まれた。

各種トークン審査・発行・流通というテーマでは、金融庁の協力のもと、CASC制度(資産自己審査制度)の適用対象外となるトークン審査については、「トークンの状況に応じた形で、トークン審査事項・項目の具体化・可視化を進めるべき」と提言。CASC制度とは、「一定の会員について協会事前審査を行う場合を特定の場合に限定する」制度。

日本の仮想通貨の審査は、仮想通貨交換業者など一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の会員が新規取り扱いを検討する銘柄に対して事実調査と自社評価を行い、レポートをJVCEAに提出するというプロセスが必要とされる。CASC制度はこのプロセスによる負荷が会員の業務を阻害するという指摘を背景に設立された。

また、ステーブルコインの登録審査基準の明確化や環境整備、自主規制団体の設立、円建てのパーミッションレス型ステーブルコインの早期発行・流通の重要性を説いた。ステーブルコインを巡っては、2022年6月の資金決済法改正で「電子決済手段」と定義され、国内の電子決済手段等取引業者が海外で流通しているステーブルコインを取り扱うことが可能となる見込みとなっている。

NFTビジネスというテーマでは、NFTをめぐる賭博該当性など法的課題の解決を図るべく必要な検討とガイドライン策定などを提言した。

関連記事:日本政府も有力視するNFTの全容|なぜデジタル作品が数十億円に?

web3普及を見据え今から議論を開始・深化すべき論点

2の今から議論を開始・深化すべき論点については、以下のようなテーマが挙げられた。

  • デジタル資産の私法上の取扱い
  • web3コンテンツの海外展開支援
  • web3事業ライセンス
  • 安心安全な利用環境
  • アンホステッド・ウォレット
  • 自治体支援
  • ML/FT対策
  • 投資DAO
  • メタバース

web3事業ライセンスについて、カストディなど仮想通貨交換業の一部のみを行う場合において過度な規制が適用されている現状を説明し、金融当局において業該当
性の判断基準の検討やフィンテックサポートデスクの周知強化など「規制の柔構造化」の検討を提案した。

投資DAOというテーマでは、海外でブロックチェーンを活用して発行されるデジタルな有価証券であるセキュリティトークンに投票機能を付した「投資DAO」が普及しつつあるが、日本では法律が整備されていない点を課題として挙げた。投資DAOの運営実態に応じた規制を明確化するよう求めている。

メタバースというテーマでは、メタバースを活用した包摂的な働き方を推進するにあたり、導入のガイドラインや支援の枠組みが乏しいと指摘。ガイドラン策定や支援のありかたについて議論すべきとした。

関連記事:金融庁、パブコメへの回答でNFTの仮想通貨該当性に関して踏み込んだ言及

NFTホワイトペーパーで取り上げた施策の進捗

昨年公表されたNFTホワイトペーパーの提言内容は以下の通り。

  • 国家戦略の策定・推進体制の構築
  • 投資ビークル・スキームの多様化
  • ブロックチェーンの技能に長けたエンジニアの育成・確保
  • デジタル空間におけるデザイン保護
  • コンテンツホルダーの権利保護に必要な施策
  • ブロックチェーン上に保存されていないコンテンツデータの確実な確保
  • NFTの移転規制(ML/TF・経済制裁対象国等への移転の防止)

NFTホワイトペーパーは、「web3政策が政府で位置付けられる推進力となり、関係省庁でweb3関係チームやプロジェクトが立ち上がり、施策の検討がスピード感を持って進むこととなった」と述べた。

関連記事:岸田首相、地方創生に向け仮想通貨税制見直しやメタバース活用に言及


参考:ホワイトペーパー要旨

参考:ホワイトペーパー全文

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