Web3で発達障害者を支援
株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は31日、発達障害者が一層活躍できる社会の実現を目指し、Web3.0技術を活用した発達障害者の支援プロジェクトへの協力を発表した。
現時点で「発達支援」および「就労」に焦点を当てた2つの実証プロジェクトが実施されており、今後取り組みは順次拡大していく予定だという。
日本総研はシンクタンク、コンサルティング、ITソリューションの3つの機能を有する総合情報サービス企業で、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の中核企業の一つ。
特にITソリューション分野では、ニューヨーク、ロンドン、上海などの海外拠点をベースに、SMBCグループ各社やそれらの顧客の海外進出をITの側面からサポートするなど高度なソリューションに定評がある。
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プロジェクト内容
グレーゾーンも含めると人口の10%程度存在すると言われている発達障害者は、コミュニケーションや環境への適応に困難を抱えやすいとされる一方で、特定の分野への高い集中力や豊かな発想力など強みを持つケースも存在する。
実際、米国のイノベーション振興の中心地とされるシリコンバレーでは、発達障害やグレーゾーンの当事者が半数以上を占めるとされる。この事実は、適正に合致した職種や就労環境であれば、定型発達(発達障害でない人たち)を凌駕するパフォーマンスを発揮する可能性があることを示唆すると言える。
しかし、現状の決められた時間や場所、対面中心での業務などの定型発達者に合わせた就労条件では、当事者が強みを発揮できるとは言い難い。こうした現状もあり、当事者の就労率や平均給与は著しく低い水準にある。
上記のような状況の中、日本総研は、時間や場所に縛られない働き方を実現し得るとしてブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)を活用した分散型の概念である「Web3.0」に着目したという。
現時点では、以下の二つの実証プロジェクトが推進されている。
NFTゲーム『The Sandbox』を活用した発達支援の実証プロジェクト
北海道小樽市内の発達支援施設「きっずてらすDive」において、発達障害のある児童を対象に、NFT(非代替性トークン)ゲーム『The Sandbox(ザ・サンドボックス)』を用いたボクセルゲーム制作講座を提供する。
現職のボクセルアーティストが講師を務め、児童にアバターやアイテムなどの制作を指導。制作物をNFT化して疑似的な販売体験を行うことで、ゲームを遊びながら成功体験を積みつつ、デジタル上での新しい仕事に目を向けるきっかけづくりも行う。
講座は、1回2時間、2023年10~11月にかけて計7回実施予定。実施後は児童や保護者にアンケート調査を行い、デジタル上での創作活動やコミュニケーションに対する興味関心や自己肯定感の高まりなどについて調査研究を実施するとした。
小樽の児童発達支援事業所「きっずてらす」にてSANDBOXを教える講座が今日から始まりました!
講師は先月に引き続きボクセルアーティストのらびっと先生とSUZUHIRO先生
今日のお題✏️
「えんぴつソードを作ってみよう」参加されたお子さん達の作ったソードのクオリティの高さにビックリ‼️… pic.twitter.com/VyJVhHHGvF
— ミズ👍GJNFT (@Mizu_gjnft) October 7, 2023
NFTアートを活用した就労の実証プロジェクト
奈良県香芝市の就労支援施設「Good Job!センター香芝」において、施設スタッフおよび障害者と共同でNFTアートコレクションを制作する。
「GoodJob! Digital Factory」と名付けられた同プロジェクトでは、1,000枚のNFTアートを販売し、障害福祉をサポートするデジタルコミュニティをその1,000人の購入者と共創することで、障害のある人々の新たな仕事の創出を目指す。NFTアートの販売は、2023年12月を予定している。
収益金は、プロジェクトに関わる障害者に還元するほか、今後、障害者や障害福祉事業所などと新たに連携するプロジェクトを生み出す資金に充てられるという。
GoodJob! NFTは障害福祉事業を行う社会福祉法人が主体となり(様々なパートナーと共に)運営するNFTプロジェクトです。事業所🏠※におけるフィジカルな福祉サービスを越えて、デジタルの中で福祉活動を展開します。… pic.twitter.com/v2XrV1Y9YI
— 【公式】Good Job! Digital Factory👍GJNFT (@gjnft_official) August 30, 2023
発達障害者向けフォーラム開催
また、日本総研は、発達障害者が一層活躍できる社会の実装を目指し、上記実証プロジェクトを含む様々な取り組みを紹介するイベントとして、11月29日(水)に東京ミッドタウン・カンファレンスにて、フォーラム「web3で実装する!発達障がいと拓くありたい未来」の開催予定を発表。
「web3で実装する!発達障がいと拓くありたい未来」フォーラムを開催 https://t.co/3z2pjCfJdy @PRTIMES_JPより pic.twitter.com/sEvqjO1Vjb
— PR TIMESビジネス (@PRTIMES_BIZ) November 1, 2023
同フォーラムでは、障害福祉の現場でWeb3.0が実装されている様子を紹介するとともに、ニューロダイバーシティ(神経多様性)とWeb3.0が当たり前に受け入れられる未来の社会のあり方について議論を行うとした。
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参考:公式発表