仮想通貨法人税の期末課税を見直しか

国税庁は20日、暗号資産(仮想通貨)の法人税法の取扱いのうち、期末時価評価について質疑応答事例を公開した。

現行法では、企業が仮想通貨を保有する場合、期末時の含み益に課税されることとなっているが、課税の対象外となりうるケースなどが記載されている。その他、ステーキング活用時やDEX(分散型金融)に関するケースにも言及した。

なお、このガイダンスは、令和5年1月1日時点の法令に基づき作成された。2022年12月にとりまとめられた令和5年度の「税制改正の大綱」に仮想通貨の法人税に関するルールの一部見直しについて記載されたが、法案の内容や施行が決定したわけではない。

期末課税の対象となる仮想通貨の条件

国税庁は「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて」と題するガイダンスの最初の質疑応答項目において「当社は、事業年度終了の時に暗号資産を保有していますが、期末に何らかの処理をする必要はありますか」との問いを掲載。以下のように回答している(一部抜粋)。

法人が事業年度終了の時において有する暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産に限ります。)については、時価法により評価した金額(本問において「時価評価金額」といいます。)をもってその時における評価額とする必要があります。

なお、その市場暗号資産を自己の計算において有する場合には、その評価額と帳簿価額との差額(本問において「評価損益」といいます。)は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。

期末時に課税されるのは活発な市場が存在する仮想通貨に限るという見解を表明した。「活発な市場が存在する仮想通貨」の定義については、法人が保有する仮想通貨のうち、以下の要件全てに該当するものと説明。

  1. 継続的に売買価格等が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
  2. 継続的に上記1の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
  3. 「上記1の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること」または「上記2の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと」のいずれかに該当すること。

加えて、活発な市場が存在する仮想通貨に該当するかどうかは、当該仮想通貨の種類や過去の取引実績およびその銘柄が取引の対象とされている仮想通貨取引所などの状況などを考慮し、個々の実態に応じて判断するとした。

DEXで取引される仮想通貨

とある企業が保有する仮想通貨がDEXに上場しており、自動マーケットメイカーにより当該仮想通貨と市場仮想通貨との交換比率が明らかにされ、その交換比率にもとづき、当該仮想通貨と市場仮想通貨との交換の取引が行われている場合に、当該仮想通貨が期末課税の対象となるかという質問が掲載された。

回答としては、DEXで取引される仮想通貨を企業が保有する場合も、公表される交換比率が他の仮想通貨取引所において公表される交換比率と著しく異なるといった特殊な事情が認められず、DEXで継続的に交換の取引が成立しているのであれば、当該仮想通貨は上記1から3までの要件を満たす限り(活発な市場が存在する場合)期末時価評価の対象となると説明した。

ステーキングでロックした仮想通貨

企業がステーキングで報酬を得るためにロック(送金できない状態に)された仮想通貨を保有するケースについて、期末課税の対象となるかという質問が掲載されたが、国税庁は当該仮想通貨が活発な市場が存在する仮想通貨であれば期末課税の対象となると回答している。

その他、企業がレンディングで貸付をしており、貸付期間終了時まで動かせない状態の仮想通貨も、活発な市場が存在する場合は期末評価課税の対象となること、企業が借り入れをした仮想通貨は、活発な市場が存在する場合は期末時価評価の対象となり得ると回答した。

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有識者の見解

今回の国税庁による仮想通貨法人税に関するガイダンス公表を受け、クリプト税制研究者・泉絢也氏が「一番インパクトのある回答」として挙げたのが、ステーキングでロック状態の仮想通貨も期末課税の対象となること。これについて、以下のように見解を示した。

これはあくまでステーキングの際のロックアップという点に注意であり、個人的には、すべてのロックアップ事例に適用されるわけではないと考えます。stトークンが発行される場合、他国(特に国外計算ソフト)ではトークン同士の交換として利確とみる場合もありうる。

また、期末課税の改正については令和5年度の「税制改正の大綱」に記載されただけの状態で今回のガイダンスが公表されたことについて、「このタイミングでこの情報を公表するということは、法案の内容がほぼ固まったということかな。国税庁が、わざわざ法案作成を担当する主税局が今書いている法案と齟齬を来すようなものをこの時点で公表するとは思えないから」と推測した。

なお、国税庁は13日にNFT(非代替性トークン)の税務上の取扱いについてガイダンスを公表したばかり。NFTの販売における消費税やブロックチェーンゲームで得たゲーム内通貨の取扱いなどが記載されている。

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参考:国税庁

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