Web3やNISAについて答弁
自民党の神田潤一議員は30日、同日開催された衆議院予算委員会にてブロックチェーン技術を活用した分散型システム構築の概念である「Web3.0」や、抜本的拡充が発表されたNISA制度について、岸田文雄首相や鈴木金融担当大臣などに質問した。
(11:40-12:00)衆議院予算委員会で初質問
岸田総理、鈴木財務大臣、黒田日銀総裁に対して、
金融政策、NISA拡充、web3やメタバース推進について質問しました。
実は、日銀→金融庁→マネーフォワードと歩んできた私自身の10年と重ねた質問でした。
あー、めっちゃ緊張した!😅 pic.twitter.com/Z3GoZsqVMo— 神田潤一(衆議院議員1期目) (@Jun1CanDo) January 30, 2023
デジタルな先端技術を活用した地方創生という文脈の中で、岸田首相がメタバースに言及する一幕もあった。
神田議員は、日銀で20年以上勤めた経歴があり、システム投資計画や金融機関の検査などを担っていた。また、金融庁に出向しフィンテック企画を担当するなど金融に精通した人物だ。
Web3.0について
神田議員は、岸田首相が施政方針演説の中で「GX(グリーン・トランスフォーメション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)、科学技術のイノベーションやスタートアップ」を成長分野として挙げたことを引き合いに出し、「そこに地方を加えてもらいたい。地方こそ成長のフロンティアと考える」と述べる。
そして、新潟県の山古志地区、北海道の余市町、岩手県の紫波町などでスタートアップが主体となり自治体とも連携しながらWeb3・NFT(非代替性トークン)・DAO(分散型自立組織)の技術を活用し地方創生の取り組みを行っているとし、地方の課題を解決し活力を高める大きな力になるのがデジタルやDXであると主張。
岸田政権の掲げるデジタル田園都市国家構想でデジタルを活用して地方の個性をいかしながら課題を解決して行くと表明していることについて、国際会議や国際的なイベントの開催、税制や規制の大胆な見直しによってこれらの動きを力強く推進するべきと提案し岸田首相に見解をただした。
岸田首相
デジタル技術が劇的に進化し地方においても便利さでは都市と遜色ない時代になりつつある。こうした時代だからこそデジタルの力を活用しつつ地域社会の生産性や利便性を飛躍的に高め、産業や生活の質を大きく高め地域の魅力を高めるチャンスであると認識している。
ご指摘のように最先端のデジタル技術をとりこむことで地域の活性化が進むことを期待したい。例えばメタバースは地理的制約を超えた活動や交流を可能とする技術の一つ。こうした新しい技術を活用することで新たな人的交流が生まれる、地域の暮らしやすさが向上する、こういった良い影響が期待される。
ご提案の点ですが、新しい技術の普及と発展を日本がリードするとともに、国民のリテラシーを高めるために国際イベントの検討を含め政策を前に進めることは重要であると認識する。
岸田首相は地域活性化に向け、メタバースの技術について「地理的制約を超えた活動や交流を可能とする技術」と評価し、活用に前向きな姿勢を示した。
また、税制や規制の大胆な見直しへの直接的な言及はなかったが、地方創生を念頭に神田議員が提案した国際会議や国際的なイベントの開催については検討など実施に向けた前進が期待される答弁内容と言える。
なお、岸田政権は暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術を含めたWeb3に関して以前より環境整備および政策推進に意欲的な姿勢であることで知られる。
政府は2022年6月、成長戦略にWeb3の環境整備を盛り込むことを閣議決定しており、同年8月に発足した第2次岸田改造内閣では河野太郎氏が「デジタル大臣」に就任。
2022年11月に発表された「スタートアップ育成5か年計画」では、専門知識を有する海外人材と日本のスタートアップとの協業を促すための海外人材の呼び込みや税制改正、NFTの国際展開に向けた新しいユースケースの発掘などに取り組む方針を示している。
関連記事:国税庁、仮想通貨法人税の期末時価評価に関するガイダンスを公開
関連記事:国税庁、NFTの税務上の取扱いについてガイドラインを公開
NISAについて
神田議員は、岸田政権が打ち出した資産所得倍増計画の大きな柱であるNISAの抜本的拡充と恒久化についても質問。
NISAのモデルとなったイギリスのISA(アイサ)に勝るとも劣らない大幅な拡充となったと評価したうえで、鈴木金融担当大臣に以下の2点について質問した。
- 資産所得倍増や成長と分配の好循環を実現していく道筋で、NISAの抜本的拡充や恒久化が国民ひとりひとりや経済全体にとってどのような意義をもつのか。
- こうした政策を国民に広く浸透させ、大きな流れを作るために、金融教育を含めて政府としてどのような取り組みを行う予定か
鈴木俊一金融担当大臣
新しい資本主義による成長と分配の好循環の実現には、人への投資を促進することが重要。そうした観点からも貯蓄から投資へのシフトに取り組む必要がある。
わが国には1,000兆円を超える家計の現預金がある。それを投資につなげることで勤労所得に加えた金融所得・資産所得を増やしていく、そして家計の投資が企業の成長の原資となれば、企業価値の向上により家計の金融資産所得はさらに拡大する。こうした成長と資産所得の好循環を実現させていきたいと考える。
NISAの抜本的拡充と恒久化は、中間層を中心とした幅広い層が若年から高齢期に至るにまで長期分散積み立て投資による継続的な資産形成を行うための環境を整えるうえで中心的な役割を担う。
こうした好循環の流れを作るためには、税制面の取り組みとともに個人の金融リテラシーを向上させライフプランに応じた適切な資産形成を支援する体制を整備することも極めて重要。そうした観点から資産所得倍増プランでは、中立的な立場から金融経済教育を提供できるよう「金融経済教育推進機構(仮称)」を設立し官民一体となって金融経済教育に対する戦略的な対応をしていくことなどが盛り込まれている。
金融庁としては、この新しい組織の設立を含め金融事業者等による顧客本位の業務運営の定着底上げ、NISA制度の積極的な広報活動などの政策を動員し貯蓄から投資への流れを実現させたい。
参考:首相官邸