IEOの改革を提言

一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は26日、IEO制度の健全化に向けた自主規制改革の方向性の初期案を公表した

この初期案はICO・IEO部会が中心となり作成したものであり、仮想通貨交換業及び仮想通貨関連デリバティブ取引業の自主規制団体である一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)に提出された。

内容は、利用者保護を念頭に日本のIEO制度の価格の安定操作や事業者による売却の制限などを明記したもので、今後は各関係機関と実現性の有無について適切に協議していく方針だ。

IEOとは「イニシャル・エクスチェンジ・オファリング」の略称で、企業や仮想通貨・ブロックチェーンプロジェクトが発行するトークンを仮想通貨交換業者が審査したうえで販売し、投資家から資金調達を行う仕組みのこと。金融庁監督下の交換業者が実施するため比較的安全性・信頼性が担保されやすいメリットがある。

令和5年度税制改正にて、自社発行トークンにかかる法人税の期末時価評価課税の適用除外要件が定められたことから、実施環境が整備されつつあり、注目度が高まっている。

一方で、これまでに国内ではパレットトークン(PLT)・FCRコイン(FCR)・フィナンシェトークン(FNCT)・ニッポンアイドルトークン(NIDT)の計4件のIEOが実施されてきたが、上場直後に販売価格を大幅に下回る事例などもあり懸念も指摘されている状況だ。

出典:JCBA

IEO後の価格の安定性

JCBAは、国内IEO制度について、①IEO実施直後の安定した価格の形成 ②IEO審査プロセスの改善 ③IEOに関する自主規制規則全体の改善の3つのスコープに分けて議論してきた。今回の提言では、①IEO実施直後の安定した価格の形成にフォーカスし、これについて以下の4つのアジェンダを設定している。

出典:JCBA

1の価格算定について、現状のIEO開始前に取引所とプロジェクトオーナーがトークン価格を決定しIEO期間中に固定価格でトークン販売を行う方法に限らない価格決定方法(IEO期間中に市場の需要と供給に応じて価格が調整される方法など)を設けることも可能とするのが望ましいとした。

2の流動性について、安定した取引環境の提供を実現するためには、流動性を増やす必要がある。対応策として引受業者がマーケットメイクする方法、それ以外の業者がマーケットメイクする方法、IEOを主幹事・副幹事で実施する方法などが記載された。

3の安定操作は、IEO実施後にトークン価格が販売価格を割る現象(公募価格割れ)に対する解決策として、トークン価格を安定させるために実施する安定操作取引の範囲を関係各機関と協議して適法に実施できるように明確化することを盛り込んだ。

4の売却制限については、IEO実施日から3か月間、IEO引受業者(取引所)やトークンの発行体、一部の投資家に対してロックアップ期間(売却できない期間)の制定やロックアップ期間中の第三者への譲渡禁止を盛り込んだ。また、ロックアップ期間が過ぎた後も、売却できるサイクルを1カ月ごととし、売却可能数量をIEO売り出し数量に対して10%を上限とすることなども明記された。

これらは、IEO関係者などトークンを大量保有するホルダーによる売り抜け発生時に価格が下落することを念頭に置いた施策だ。

改革案の公開に際し、パレットトークン(PLT)発行元のHashPort代表でJCBAのICO・IEO部会 吉田世博会長は以下のコメントを寄せた。

法規制・税制・会計の各方面を踏まえたIEOの制度化は本邦が世界に先駆けて行ったものであり、日本のWeb3産業の発展を大きく加速させる可能性を持つ一方、黎明期であることに起因する課題も顕になってきています。

健全で持続可能な IEO 市場の形成には、関係者が一丸となっての自主規制ルールの制定が不可欠であると考え、今回、初期案を提出いたしました。本提案を起点に、売却制限の制度化等の顧客保護施策と、IPO市場では一般的である上場時の価格安定化措置等の市場効率化施策の両面について、各関係機関と今後協議をさせていただきたいと考えています。

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参考:公式発表

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